トランスポーターとは?

1. はじめに

細胞ではその生存のために細胞内イオン環境の恒常性維持が本質的意味をもつ。従って細胞膜を介した細胞内外のイオン並びに有機物質の輸送が絶えず営まれている。細胞膜は脂質二重層により構成されているため、脂溶性の低分子物質は障壁が無く簡単に通過できる。しかし、イオンや生体代謝に関与する多くの水溶 性有機物質は水溶性のため、脂質二重層膜は不透過であり、それらの膜通過には特別な“pore”構造を必要とする。これがイオンチャネルやトランスポー ター等の膜輸送タンパク質である。

2. トランスポーターとは?

トランスポーターはチャネルやレセプターと共に細胞膜に存在する膜タンパク質である。トランスポーターはチャネルとは異なり”pore”が全開になることはなく、輸送のたびに基質結合部位の向きを細胞内・外に一回ごとにスイッチ・リセットしながら物質を輸送するとされる。このためトランスポーターの輸送率(10^2~10^4個/秒)はチャネルの輸送率(10^6~10^8個/秒)よりも極めて遅くなる。さらにトランスポーターは、チャネルとは異なり輸送基質として内因性物質だけでなく、薬物や環境化学物質を含む多くの外因性物質も認識する。この「多選択性」の輸送もトランスポーターの特徴と言える。
このトランスポーターは現在ATPの加水分解エネルギーを利用して輸送を行うABC (ATP binding cassette) ファミリーと、ATPのエネルギーを用いないで輸送を行うSLC (Solute carrier) ファミリーの二つに分けられ、ヒトにおいては48種類のABCトランスポーター遺伝子と319種類のSLCトランスポーター遺伝子が同定されている。

3. トランスポーターと病態

トランスポーターの異常によって生ずる疾患は加齢とともに増加し、50歳以降の高齢化疾患関連遺伝子の約10%にトランスポーターが関連するとされるので 1)、いわゆる生活習慣病の治療薬開発の標的分子と考えられる。しかもその応用には臨床医学的背景を詳細に検討する必要がある。トランスポーターによる病態は、狭義にとらえるならば、「トランスポーターの異常に起因する膜輸送障害によって惹起された病態」と言えるが、トランスポーター自体に異常がなくても膜輸送障害は発生しうる。例えばトランスポーターを調節するホルモンなどのレセプターシグナル異常や細胞内情報伝達異常、さらにはトラスロケーションの異常などの原因も膜輸送障害を発生しうる。しかし分かりやすい疾患は「トランスポーター病」とも言えるトランスポーター遺伝子異常(変異等)であり、遺伝子治療が合目的治療となる。Cl-チャネルの一種でありABCトランスポーターにも分類されるCFTR (Cystic fibrosis transmembrane conductance regulator) 遺伝子変異により嚢胞姓線維症を発生することを皮切りに 2)、以後多くのトランスポーター病が報告された。

参考文献

1) Jimenez-Sanchez G, Childs B, Valle D: Human disease genes, Nature, 409:853-855, 2001.
2) Riordan JR, Rommens JM, Kerem B, Alon N, Rozmahel R, Grzelczak Z, Zielenski J, Lok S, Plavsic N, Chou JL: Identification of the cystic fibrosis gene: cloning and characterization of complementary DNA, Science. 245:1066-1073, 1989.
3) Giacomini KM and Sugiyama Y, Membrane transporters and drug response, Chapter 2 in "Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics 11th edition", Brunton LL 2005 pp. 41-70, 2005 pp. 41-70

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